「北朝鮮国籍」と「朝鮮籍」の話。
buyobuyoさんの「そもそも北朝鮮籍なんてない件」に関連して。
このこと、つまり「朝鮮籍」と「北朝鮮国籍」が全く違うものであることは、映画「ディア・ピョンヤン」のパンフレットの解説文で初めて知った*1。
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つまり、自分がこのことを知ったのは割と最近のことなので、あまり偉そうなことを言える立場ではない。これについてはすでにネット上でも色々な方が書かれていることではあるのだが、まだ知らない人も少なくないようだし、ネット上の情報が増えるに越したことはないだろう、ということで、以前ある場所で書いたものをコピペしておく。
1910年の韓国併合で「日本人」とされた朝鮮人ですが、敗戦後の1947年「外国人登録令」で在日朝鮮人と在日台湾人は「日本国籍は有しているが、当分の間外国人と見なす」とされました。
この時点で「大韓民国」も「朝鮮民主主義人民共和国」もありませんでした。だから在日朝鮮人は登録証の国籍欄には便宜上「朝鮮」と書かれましたが、これは「国籍」ではなく「出身地」を表す「記号」ということになりました。「朝鮮籍」の始まりです。
翌年1948年、韓国政府と北朝鮮政府が樹立。1952年には平和条約発効に伴い、在日朝鮮人と在日台湾人は日本国籍を正式に離脱*2し、そして1965年には日韓基本条約が締結されます。
この間、またそれ以降も、外国人登録証の国籍欄の記載を「朝鮮」から「韓国」に書き換える人が出てきました*3。これが「韓国籍」です。
日本はこれについて「朝鮮籍はあくまで国籍ではなく記号だが、韓国籍は国籍を示す」という見解を出しました。
余談だが、映画「パッチギ!LOVE&PEACE」に、ヒロインのキョンジャ(中村ゆり)が映画のオーディションを受ける場面がある。プロデューサーの三浦(ラサール石井)は在日であるキョンジャに「君、北なの、南なの?」と尋ね、キョンジャは「・・・朝鮮のままです」と答える。
つまり、三浦もまた在日を「北(北朝鮮籍)」と「南(韓国籍)」の二種類だと捉えていて、それに対しキョンジャは「朝鮮のまま(韓国籍への書き換えはしていない)」と答えているのだが、在日の「国籍」に対する多くの日本人の認識の誤りを実にさりげなく描いている。
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*1:余談だが、「ディア・ピョンヤン」の監督、ヤン・ヨンヒさんとは縁あってお酒の席でご一緒したことがある。「しなやか」という言葉が良く似合う、魅力的な方だった。彼女とカラオケでブルーハーツナンバーを熱唱したのは、自慢じゃないが、自慢だ。
*2:「離脱」というよりは「喪失」、あるいは一方的な「剥奪」という方が正しいのだろうが、ここでは置いておく。
*3:1965年の日韓法的地位協定によって、韓国籍に書き換えると「協定永住」という、より安定した在留資格が得られるようになった。なお、91年の入管特例法により、在日の在留資格は「特別永住者」にほぼ一本化された。
*4:細かいことを言えばもっと色々あるのだが、キリがないのでとりあえずこれだけ。