何が問題だったのか。


ざっとだけど、この件についての意見やブログなどを読んでみた。


これは幾重にも問題が絡み合ってると思う。自分なりにまとめてみる。


・まず、主張の是非以前に論文としてダメ(論文としての体をなしていない)。

・主張の論拠がかなりトンデモ(コミンテルンは日米中を自在にコントロールできるような力を有していたのか?日本は「コミンテルンの謀略」に踊らされて戦争に突入するような間抜けな国だったのか?)。

・日本政府の方針に反した主張を国防の要職にある者がした(文民統制の見地から鑑みて、発言は制限されるべき)。←政府が問題にしてるのは主にココ。

・それ以前の問題として「侵略は濡れ衣」という主張がおかしい。百歩譲って「日本だけが侵略した(悪かった)のではない」と主張するのは良いとしても、違う形でのアプローチはあったはず。

・国防の、しかも要職につく者は自国民の生命や財産を守り、また部下の命も左右する立場であり、その意味においてリアリストたるべきである。そうした人物が「陰謀史観」を信じ込み、また自分の言動がどのような波紋をもたらすか認識していなかったとすれば、その職にふさわしくないと判断せざるを得ない。

・上記のような低レベルな論文が大賞を受賞するという、賞の質が問題。また主催側と田母神氏の関係も怪しい。


だいたいこんな感じだと思う。


さてしかし、今日の参考人招致のニュースや、それに対する反応を見ていて、別のことを考えるようになった。


おそらく、政治家の中には田母神氏の主張に共感している人がけっこういると思う。麻生首相をはじめ自民党議員だけでなく、野党民主党にもシンパはいるだろう。しかし、それを表立って言えば自らに累が及ぶから、それをあからさまには表明できないし、また田母神氏に対する追及も甘いものになる。


そういう及び腰の政治家と比較して、自説を曲げず堂々と持論を主張する田母神氏が「かっこよく」見え、少なくない人々が共感を覚えるのはある意味当然だ(実際ミクシィでの田母神氏を支持するコミュは、着々とメンバーを増やしている)。





で。こういうことを言うといかにも「サヨク(しかも一昔もふた昔も前の)」みたいでイヤなのだけれど、こういう状況って戦前の二・二六事件を思い出すんだよね。あれも首謀者たちは処罰されたけど、多くの国民が青年将校の「決起」に共感したし、結果的に軍の暴走を招いた。


あんまり安易に「右傾化」を叫んだり、「この道はいつか来た道」みたく不安を煽るようなことは言いたくないのだけれど、ど〜も、ね。