mumur氏とその支持者は「朝鮮人強制連行の記録」のp98と「証言 朝鮮人強制連行」のp121〜123を読んでから自説を展開すべきだと思う。


はてなブックマークを辿っていて、二年ほど前のこんなブログ記事を見つけた。


mumurブルログ:当ブログをご覧の枚方市人権政策室の職員の皆様へ


これを読んだだけでは状況が掴めなかったので前後の記事もチェックしてみた。


枚方市が朝鮮人の捏造に荷担「あなたは在日が強制連行された人たちであることを知っていますか」


「在日の多くは強制連行されて仕方なく日本に住んでいる」と主張する枚方市人権政策室に電話してみました


かいつまんで言うと、枚方市の人権政策室という部署が人権に関するアンケートを行った。その問の中に「朝鮮人強制連行」に関する設問があったため、mumur氏が「電凸」した、ということのようだ(検索してみると、このことに触れているブログがいくつもヒットするので、おそらく当時はちょっとした「祭り」になったのだろう)。


しかしこの話、はじめからおかしい。件のアンケートの文面はこうだ(太字による強調は引用者)。


問16 現在、日本に住んでいる韓国人・朝鮮人の多くは、かつて日本の植民地政策によって農地を奪われたりして、日本への渡航を余儀なくされたり、あるいは戦争中に労働力として強制的に連れてこられ、差別を受けてきた人々やその子孫であることが多いといわれています。あなたはこのような歴史的経過はご存じですか。


mumur氏はこれを「あなたは在日が強制連行された人たちであることを知っていますか」と“意訳”している。しかし、太字部分の「戦争中に労働力として強制的に連れてこられ」は明らかに「強制連行」を指しているが、その前の「日本の植民地政策によって農地を奪われたりして、日本への渡航を余儀なくされた」という箇所は「強制連行」には当たらない。


このブログで何度も言及してきたように、現在の在日コリアンの内「強制連行」がルーツである人は少数で、多くは戦前の渡日によるものである。これ以外は戦後に日本にやって来た人々(いわゆるニューカマー)で、割合としてはこれも少数だから、上記の枚方市の設問は何ら問題はない*1


その部分を(意識的にか無意識的にか分からないが)ごっちゃにして「近年その嘘が明らかになってます」「朴一氏も嘘だと認めています」だのと「電凸」してこられては、枚方市の職員の方もいい迷惑だろう。





さて、最初に挙げた記事に話を戻す。ここでmumur氏は「マンガ嫌韓流のここがデタラメ」の朴一氏の主張を批判している。


どうやらmumur氏は鄭大均氏の「在日・強制連行の神話」によって「在日のほとんどが強制連行によるものではない」ことが初めて明らかになり、朴一氏もそれを認めざるを得ないから苦しい言い訳をしている、と捉えているようだが、「強制連行」された朝鮮人の多くが戦後まもなく帰国した事実は朴慶植「朝鮮人強制連行の記録」(1965年)金賛汀「証言 朝鮮人強制連行」(1975年)にも記されていたのであって、鄭大均氏の「発見」でも何でもない。


また、朴氏が「韓国併合無効論」に依っていることをあげつらっているが、仮に韓国併合が有効・合法であるとする立場に立つにせよ、「強制連行」の実態が当時の法律に照らしても違法な形で行われていたことは、金順吉さんの裁判でも明らかにされている。





結論を言えば、mumur氏の枚方市への「電凸」は、「ネットで真実を知った!(と思い込んでしまった)」系の人による、単なるいいがかり・迷惑行為でしかない。


ただし、mumur氏の主張のうち、朝鮮総連の「強制連行」の見解に対する批判については(その理由は全く正反対だが)同意する。朝鮮総連が未だに「在日は強制連行された人々とその子孫」というような表現をするのは、「強制連行」そのものを「嘘」「捏造」にしたがっている人々を利するだけだと思う。

*1:「日本の植民地政策によって農地を奪われたりして、日本への渡航を余儀なくされた」の部分を「自由意思の出稼ぎ」と主張する人もいるかもしれない。実際、戦前の渡日者の中には「朝鮮半島では生活出来なくて日本に来るしかなかった」人もいれば「朝鮮半島でも生活は出来たが、より良い生活を求めて日本にやって来た」人もいるだろう。しかしそれを厳密に区分することに意味があるとは思えない。