今日図書館で借りた本。


海に消えた被爆朝鮮人徴用工―鎮魂の海峡

海に消えた被爆朝鮮人徴用工―鎮魂の海峡

前々回前回取り上げた「朝鮮人徴用工の手記」同様、広島で被爆した朝鮮人徴用工についての書籍。筆者は当時、指導員として朝鮮人徴用工の三菱西寮に勤務していた人物。


内海愛子氏は他に朝鮮人BC級戦犯についての著書もあるが、まずは地元図書館に置いてあったこのブックレットから読むことにする。

最近知った話なのだが、ある時期まで日本の街角に立っていたという(1973年生まれの自分は実際に見たことはないが)傷痍軍人の中には国籍を理由に補償から除外された朝鮮人が少なくなかったようだ。さっきふと思いついて、ウィキペディアで「傷痍軍人」を検索してみたのだが、そのことについての記述はなかった。


穴から穴へ13年―劉連仁と強制連行 (母と子でみる)

穴から穴へ13年―劉連仁と強制連行 (母と子でみる)

以前触れたが、朴慶植氏が「朝鮮人強制連行の記録」を執筆したのは、中国人強制連行についての調査報告に触発されたのがきっかけであった。少なくともその頃(終戦〜1960年代)は「強制連行」と言えば「中国人強制連行」のことを指すことが多かったようだ。しかし、たぶん今「強制連行」と言って想起されるのは朝鮮人に対する、あるいは慰安婦についてのそれである場合が殆んどで、中国人強制連行についてはあまり語られていないのではないか、という気がする。そういえば、中国人強制連行に対する否定論というのも見たことがない。ある意味矛盾した話であるが、否定されることでより注目を集める、ということもあるのかもしれない。そういえば笠原十九司氏も「否定論者のおかげで南京事件研究は発展した」と皮肉混じりに言っていたが、その意味ではこの分野に対する否定論がなかったことは「不幸」なことなのかもしれない。

これは、「母と子でみる」とあるように、子どもでも読める内容になっている。いずれ、より詳しい内容のものも読む予定。


思いやる勇気―ユダヤ人をホロコーストから救った人びと

思いやる勇気―ユダヤ人をホロコーストから救った人びと

これはミクシィで、とあるマイミクの方から勧めて頂いたもの。内容は題名通り。ただし、この本で取り上げられているのはシンドラーのような例ではなく、ささやかな勇気でユダヤ人を救った、無名の人々の逸話。

そういえば、朝鮮人戦時動員についての書籍でも、逃亡した朝鮮人を手助けしたり匿ったりした日本人の話が時々出てくる。以前紹介した「百萬人の身世打鈴」には鄭正模さんの次のような証言もある。

びっくりすることには、あの当時アイヌ部落へ逃げ込んだ人たちはみんな助かっとるんです。アイヌの人たちはこの逃げてきた人をね、絶対外に出さないんですよ。それで天井の裏へ隠したり、土嚢へ隠したりしてね。(中略)アイヌ人の家には半年ぐらいいましたよ。(p386〜387)。


以前こちらで「アウシュヴィッツ収容所」の一節を引用したが、この本にも同じようなことが書かれていた。

人間のこの「暗黒面」について教えたいと思う者は、ナチが非人間的な野獣ではなく、わたしたちとまったく同じ人間だった、ということを忘れてはならない。そこが問題なのである。

もし彼らが、われわれと違う非人間的存在であったならば、「わたしたちは人間だから、ああいう行動はとらない」といって片づけてしまうこともできるだろう。しかし、彼らは野獣ではなかった。ナチスの暴挙を生んだ背景に、異常な状況と、異常な要因の重なりがあったのは事実であるが、われわれ人間は誰でも、彼らと同じように行動する可能性をすくなくとも潜在的にはもっている。(p2「天はなぜ光を失わなかったか――日本の皆さんへ」より)

これはナチスホロコーストに限らず、例えば南京事件にもそのまま当てはまることは、言うまでもない*1

*1:筈なのだが、そう認識していない人もまだまだ少なくないようだ。であるならば、やはり言い続けなくてはいけないのだろう。